かいがのしょうり

芸大生による随筆か批評かよくわからない短編文集。Short essays by an art student.

ジャン・フォートリエ《人質》

いま大原美術館ではフォートリエの《人質》とジョルジュ・ルオーの《道化師》が隣に並んでいる。この両作品にはいくつか共通点がある。まず、支持体として「カンヴァスに裏打ちされた紙」を用いている点。材料がともに油彩である点。主題が人物の顔であるところ。大きさがだいたい60×60程度であること。そして、机上で制作されたこと。これはフォートリエと同時代のポロックが、巨大な画面を床に置いて制作したのとは対照的である。それから、ともに厚塗りであることもよく聞く。けれども、隣で見比べてみると、ルオーの厚塗りはフォートリエの厚塗りと質が異なると感じた。フォートリエはもちろん油彩も使うが、石膏を水彩やパステルで彩色して用いている。画面では紙の乾燥した質感と石膏の艶が目立つ。一方、ルオーは油彩と、可能性としてはそれに砂を混ぜて使用している。色調も暗い。厚塗りをまるで隠れてしているかのように思える。暗い色調に絵具の量感を工夫して、表現の幅を持たせる方法はよく見られる技法だが、ルオーの絵はまるで砂絵のような素材の質感が認められる。

 

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